来月放送されるCBCラジオ番組の収録が行われました。
「健康ライブラリー」は、名古屋大学医学部の協力のもと、一般の方々と医療現場との情報の共有などを目的とした健康情報番組。
毎回、「教えてドクター」という現場の医師からの話の後に、名古屋市各地で活躍している薬剤師の取り組みを紹介しています。
今回は、在宅医療についてお話させていただきました。
在宅医療を行うにあたり、患者さまお一人お一人からたくさんのことを教えていただき、そして宿題をいただき、今に至っています。
そのエピソードのうち、今回の放送で、ある方のお話を紹介させていただきました。
お食事を摂れず点滴で栄養を補給している末期の肺がん患者さまのケアに当たらせていただいたときのことです。
退院直後はお話ができるほど元気でしたが、1週間が経たないうちに全身の痛み、だるさ、そして尿の変色や泡立ちが目立ってきました。
患者さまは娘さまとの思い出が詰まったアルバムを見ることがとても好きでした。ただ痛みのせいで30分すら座ることができず数ページ、アルバムを見ては横になる生活を送っていました。「30分でいいから病人ではなく母親として娘と一緒にアルバムをみたい」というのが患者さまの願い。そのために薬剤師としてできることして、まず「痛みをとること」を医師と相談しました。
がんによる痛みには医療用麻薬を使用し、その他の痛みについてはいわゆる痛み止めの坐薬を始めました。
麻薬ときくとみなさんも怖いイメージをもたれるかもしれません。介護にあたっていた娘さまも同じように不安をお持ちになっており、最初のうちは、麻薬は使わず、痛み止めの坐薬のみを使っていました。
しかし、患者さま本人の苦痛は緩和されません。それ以上に日に日につらそうなお顔をみせるようになりました。一刻も早く痛みをとってあげたい、その思いで娘さまと話し合いました。娘さまも麻薬を使う必要があることを重々承知していましたが、その勇気がでない、ということでした。
毎日貼り替えるテープの麻薬を使い、娘さまの不安が取り除かれるまで訪問看護師の方と協力し、貼り替えのタイミングで毎日訪問を繰り返しました。麻薬を使用し始めて2~3日で患者さまのお顔が穏やかになってきました。その顔をみて娘さまも安心してくださいました。
また、ケアマネジャーや訪問看護師と協力し、ベッド環境を変えたり手作りのクッションを使い、体への負担を最小限にする工夫を行いました。
20分程度でしたが、ベッドに座り娘さまとアルバムを見たり、思い出話をすることができました。
在宅医療、特にがん末期の患者さまにとって、残された時間は「亡くなるまでの時間」と思われる方も多くいらっしゃいます。
そうではなく「残された時間をどう生きるか?」 そのお力添えをするのも、私たち医療従事者ができることであり、それが在宅医療だと学ばせていただきました。
そんな想いを込めて収録したラジオ番組です。お時間ある方は是非ともお聴きください!
【放送予定日】
5月14日(日) 朝6:05~ CBCラジオ